監修 鈴木 隆二
筑波胃腸病院 理事長
経歴
- 聖マリアンナ医科大学 卒業
- 東京女子医大初期臨床研究センター 研修医
- 東京女子医大消化器病 センター 外科 錬士
- 東京女子医大大学病医学 研究科 博士課程修了
- 東京女子医大消化器病 センター 外科 膵臓外科 助教
- 医療法人筑三会筑波胃腸病院 理事長
鼠径部とは大腿の付け根にある、三角形の部分のこと。
鼠径部にしこりや痛みを感じたら、病気のサインかもしれません。特に一部の病気は放置すると悪化するリスクがあるため、「もしかしたら」と思ったら早めに医療機関を受診しましょう。
今回は鼠径部のしこり・痛みで疑われる病気と治療方法、さらに鼠径部のしこり・痛みの原因で多い鼠径ヘルニアについても詳しく解説します。
鼠径部(そけいぶ)とは、下腹部かつ大腿の付け根にある三角形の部分を指します。鼠径部の内側には脂肪や腹膜、そして腸などの臓器があります。
鼠径部周りではしこりや痛みを感じることがあります。その症状はもしかしたら病気のサインかもしれません。
症状を感じた時点で、放置せず医療機関を受診しましょう。
鼠径部にできた“しこり”。しこりは、皮膚や皮膚の下にできる腫瘤の一種で、できものや水が溜まるなど、さまざまな原因で体のどこにでもできる可能性があります。硬さや大きさ、痛みがあるか、大きくなるかによって、原因や治療方法が異なります。
ぷっくり膨らんだり、コリコリとしていたり、大きかったり小さかったり、大きさが変わったり……。鼠径部にできるしこりは、病気によって形や大きさ、痛みの程度が異なります。
鼠径部ではしこりのほか、痛みを感じることもあります。痛みは臓器の圧迫や炎症により起こります。
鼠経ヘルニアでは、引っ張られるような痛みやチクチクした痛みを感じる方が多いです。最初は痛みを感じなくても、病気が進行するうちに痛みを感じるケースもあります。
鼠径部のしこり・痛みで疑われる病気として、代表的なものを紹介します。
本項目では鼠径部のしこり・痛みで疑われる病気とその特徴を解説します。
鼠径ヘルニアは、太ももの付け根の鼠径部がポッコリと膨らんだ状態です。足の付け根にある鼠経部の皮膚の下に、本来はお腹の中にあるはずの腸や筋肉・脂肪組織・皮下脂肪が筋膜の間から外に飛び出てしまう病気です。一般的には『脱腸(だっちょう)』ともいわれています。
発症初期の鼠径ヘルニアはポッコリと膨らんでいますがやわらかく、押すと飛び出た腸や筋肉・脂肪組織・皮下脂肪は体の中に戻り、痛みや違和感がないことがほとんどです。
鼠径ヘルニアを放置していると、しこりの部分が大きくなり、腸などの組織が飛び出たままになり血液が流れなくなり、嵌頓(かんとん)という状態になってしまうこともあります。鼠径ヘルニアが嵌頓すると、しこりの部分は硬くなり熱を持ち激痛を伴います。
大腿(だいたい)ヘルニアとは鼠径ヘルニアよりも下の方が膨らむ病気です。鼠経よりももうすこし下の太ももにある大腿管という部分から、腸が飛び出してしまった状態です。
大腿ヘルニアは出産を経験した高齢のやせた女性がなりやすいといわれています。大腿の筋膜や筋肉が弱くなることによって、ヘルニアが発生しやすくなります。
鼠径部リンパ節腫脹や鼠径部リンパ管炎は、鼠径部にあるリンパ液をせき止めるリンパ管やリンパ液が流れるリンパ管に炎症が起こった状態です。
リンパ節やリンパ管に炎症が起こると、鼠径部が腫れるためしこり・痛みとして自覚することがあります。
鼠径部リンパ節腫脹・鼠径部リンパ管炎の原因は、感染症や血液の癌などです。
動脈瘤は鼠径部の動脈が、静脈瘤は鼠径部の静脈がこぶのようにふくれている状態です。
原因は、怪我や血管の流れが滞ることなどが考えられます。
腫瘍は鼠径部に傷やできものができて、水や膿が溜まってしこりになった状態です。
鼠径部皮下膿瘍では痛みや熱感を伴います。
Nuck管水腫は鼠径部にあるNuck管に水が溜まった状態です。女性だけに発症し、20〜40歳代に多いといわれています。鼠径ヘルニアと同じような場所にしこりができるため、見た目や症状は鼠径ヘルニアと変わりません。
グロインペイン症候群になると動作に伴い鼠径部周辺に痛みを生じます(※1)。スポーツ選手、特にサッカー選手に多く見られます。何らかの原因で股関節周りの筋肉や関節の機能が低下することで発症する病気です。
治療するには、マッサージやリハビリテーションにより股関節の拘縮や筋力低下を改善します。
(※1 参考)スポーツ損傷シリーズ 11.グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)|日本スポーツ整形外科学会(JSOA)
鼠径部のしこり・痛みを自覚したら、何科を受診すればよいのか悩む方も少なくありません。鼠径部のしこりの原因によって治療方法が異なるため『鼠径部のしこり・痛みなら●●科!』と言い切るのは難しいのですが、一般的には次の科の受診がおすすめです。
鼠径部のしこり・痛みの原因に鼠径ヘルニアを疑う場合は、消化器外科の受診がおすすめです。
皮膚のできものを疑う場合は、皮膚科・形成外科を受診してください。
また鼠径部のしこり・痛みの原因がわからず何科を受診したらよいかわからない場合は、かかりつけの医療機関を受診し、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらうとよいでしょう。
保存的治療とは切ったり、抗生剤を飲んだりなどの治療をせずに様子を見ることをいいます。
医師が鼠径部を診察し、経過によっては自然によくなる可能性がある、または手術が必要な状態ではないと判断した場合に保存的治療を選択します。
なお、患者さん自身の判断で治療をせず様子を見ているのとは、意味が全く異なるため注意が必要です。保存的治療は、あくまでも医師の判断を元に選択されることを理解してください。
鼠径部のしこり・痛みの原因が、鼠径ヘルニアや腫瘤・動脈瘤・静脈瘤などの場合は手術による治療が必要です。
なぜならこれらの病気の場合は放置していても完治が見込めないだけでなく、鼠径ヘルニアの嵌頓や腫瘤・動脈瘤・静脈瘤の拡大などさまざまな合併症を引き起こす可能性があるからです。
鼠径ヘルニアの手術についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひお読みください。
鼠経部のしこり・痛みは、鼠径ヘルニア以外にも感染症や血管の瘤などさまざまな原因でできる可能性があります。
鼠径部のしこり・痛みに気づいたら早めに医療機関を受診し、診断・治療を受けることで予期せぬ合併症や後遺症を防げます。
茨城県つくば市の筑波胃腸病院は、鼠径ヘルニア治療の専門病院です。
つくば市や近隣地域で鼠径部のしこりが気になる方、鼠径部のしこりの治療を希望される方は、ぜひお気軽に当院へご相談ください。
鼠経ヘルニアの治療について、もっと知りたい方はこちらのページをご覧ください。
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