いぼ痔は自然に治る?市販薬の選び方や自宅での対処法、受診が必要な症状を解説

いぼ痔は自然に治る?市販薬の選び方や自宅での対処法、受診が必要な症状を解説 hemoroids natural healing

「いぼ痔は自然に治るの?」

「市販薬で対処できる?」

お尻の違和感やいぼ痔の症状が初めての場合、自宅で治せるのか不安に思う方は少なくありません。

結論として、痔の自然治癒は期待しにくいです。最低限、排便習慣の改善や外用薬などの保存療法が必要とされます。

この記事では、自宅での対処法や市販薬の選び方、医療機関の受診を検討すべき症状などを解説します。

いぼ痔(内痔核・外痔核)の主な症状と病態

いぼ痔(痔核)とは、肛門周囲の静脈がうっ血して腫れた状態を指します。

主な原因には、便秘や下痢、妊娠、長時間の座位などによる肛門への持続的な負担が関与すると考えられています。

いぼ痔はできる場所によって以下の2種類に大きく分けられ、症状の程度や進行段階によっても治療方針が異なります。

  • 内痔核:痛みは少なく出血しやすい
  • 外痔核:腫れと強い痛みが出やすい

それぞれ主な症状や特徴について詳しく解説します。

内痔核:痛みは少なく出血しやすい

内痔核Ⅰ度|出血することも

内痔核は、肛門の歯状線(直腸と肛門の境目)より内側の直腸粘膜部に発生する痔核です。

内痔核の主な症状は排便時の出血や脱出であり、知覚神経がほとんど分布していないため、強い痛みを伴うことは少ないです。

進行度はGoligher分類により、以下の4つの段階に分けられます(※1)。

  • grade Ⅰ:排便時に痔核は膨隆するが、脱出はしない
  • grade Ⅱ:排便時に痔核が脱出するが、排便後は自然に戻る
  • grade Ⅲ:排便時に痔核が脱出し、手で押し戻す必要がある
  • grade Ⅳ:常に痔核が脱出し、戻せない

痛みを感じなくても、出血が続く場合は痔核の進行や大腸疾患など別の病気が隠れている可能性があります。

症状が長引く時は、早めに医療機関を受診することが望まれます。

(※1 参考)日本大腸肛門病学会|肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン 2020年版

外痔核:腫れと強い痛みが出やすい

外痔核

外痔核は肛門の外側(皮膚部分)にできる痔核で、いぼ状の腫れとして現れます。

外痔核の発生場所は知覚神経が分布しているため、多くの場合で腫れや痛みを伴います。

血栓が形成される血栓性外痔核では、突然の強い痛みと腫れが生じ、歩行や排便に支障をきたすこともあります。

軽症であれば、安静や鎮痛薬による保存的治療が行われ、急性期を過ぎると徐々に軽快に向かいます。

保存的治療を行っても強い痛みが続き、改善が乏しい場合には外科的治療が検討されます。

外痔核には多様な病態があり、内痔核のような明確なグレード分類はありません。症状の程度や血栓の有無などから総合的に評価されます。

いぼ痔は何もせずに自然に治る?基本的に自然治癒は期待できない

いぼ痔は、何もせず自然治癒を期待するのは基本的に難しいでしょう。

ごく軽度のいぼ痔であれば自然緩解の可能性も否定できませんが、多くは排便習慣の見直しやセルフケアが最低限必要とされます。

いぼ痔を放置すると重症化したり、他疾患が隠れていた場合は治療の遅れにつながるリスクもあります。

「自然に治るだろう」と自己判断せず、肛門周辺に気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

【すぐに病院に行けない場合】
自宅でできるいぼ痔の対処法・応急処置

いぼ痔ができても、仕事や育児などですぐに病院に行けない場合は、自宅で応急的にできる対処法があります。

  • いぼ痔の脱出が痛くない場合:押し込む
  • 痛みや腫れがある場合:安静、市販薬

ただし、これらはあくまで一時的な対応です。他疾患の可能性や重症化リスクもあるため、基本的には医療機関の受診をおすすめします。

いぼ痔の脱出が痛くない場合:押し込む

いぼ痔の脱出が痛くなければ、手指でゆっくりと肛門の中に押し戻しましょう。

脱出したいぼ痔に触れる際は、必ず手指を清潔にし、無理に力を入れないように注意します。

押し戻す時に痛みや抵抗感があれば、粘膜や血管を傷つける恐れがあるため、むやみに触らず中止してください。

いぼ痔の脱出を押し込むのは応急的な対応であり、根本的な解決にはなりません。

何度も押し込む必要がある、または症状が進行していると感じる場合は、早めに肛門科・肛門外科を受診してください。

痛みや腫れがある場合:安静、市販薬

いぼ痔の痛みや腫れが強い場合は、まず横になって安静を保つことが大切です。

消炎鎮痛作用のある市販薬(坐薬や軟膏)は症状の軽減に有効で、特にステロイド成分は炎症や腫れを抑える効果が期待できます。

患部がうっ血している場合は、入浴や温活グッズなどで温めて血流改善を促します。

ただし、肛門周囲が赤く腫れてズキズキ激しく痛む場合は、横になって安静を保ち、患部を冷やしましょう。

強い痛みや腫れが続く場合、他疾患の可能性もあるため、速やかに肛門科・肛門外科で診察を受けてください。

いぼ痔の市販薬の選び方

いぼ痔の市販薬を選ぶ際のポイントは、薬の形状と有効成分です。

  • いぼ痔外用薬の形状(剤形)
  • いぼ痔外用薬の主な有効成分

内痔核と外痔核に適した形状や、外用薬の主な有効成分について解説します。

いぼ痔外用薬の形状(剤形)

痔の外用薬の形状は、主に注入軟膏・坐薬・軟膏の3種類です。

内痔核と外痔核、それぞれに適した形状を以下の表にまとめています。

いぼ痔外用薬の形状 内痔核 外痔核
注入軟膏
軟膏 ×
坐薬 ×

※1

注入軟膏は先端が細くなった小さな容器に入っており、肛門内への注入と外側への塗布の両方に使えます。

軟膏は外痔核に直接塗るタイプで、指やガーゼを使って肛門外側に塗布します。

坐薬は肛門内に挿入し、体温で溶けて成分が徐々に放出され、内痔核に作用します。

いずれの薬も患部に触れる際は、感染予防のため手指を清潔に保つことが大切です。

(※1 参考)ボラギノール|症状にあわせて選べる3つのタイプ

いぼ痔外用薬の主な有効成分

いぼ痔の市販外用薬に使われる、主な成分と作用は以下の通りです。

主な作用 成分
痛み・かゆみの緩和 局所麻酔成分
(リドカイン、ジブカイン塩酸塩など)
炎症や腫れの抑制 ステロイド成分
(プレドニゾロン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステルなど)
非ステロイド抗炎症成分 (グリチルレチン酸、リゾチーム塩酸塩など)
出血の抑制 血管収縮成分
(塩酸テトラヒドロゾリン、dl-メチルエフェドリン塩酸塩など)
傷の治癒促進・組織修復 組織修復成分(アラントイン、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイネートなど) ビタミン類
(トコフェロール酢酸エステル=ビタミンE誘導体など)
感染防止 殺菌消毒成分
(クロルヘキシジン塩酸塩、セチルピリジニウム塩化物水和物など)

有効成分の中でもステロイド配合薬は作用が強く、急性期の腫れや強い炎症を速やかに抑える効果が期待できます。

ステロイド配合薬は効き目が強い反面、皮膚萎縮や免疫低下などの副作用に注意が必要です。

特に、患部が化膿している場合には症状を悪化させる恐れがあるため、ステロイド配合薬の使用は避けましょう。

急性期を過ぎたら、比較的副作用が少ない非ステロイド配合薬への切り替えが推奨されます。

いぼ痔で病院に行くべき症状

いぼ痔で病院を受診するタイミングは、症状の程度や持続期間が目安になります。

受診を検討すべきいぼ痔の症状 解説
頻繁または大量の出血 持続的な出血は中等度以上の痔核や他疾患の可能性あり
脱出が戻らない・何度も脱出する 緊急性や進行度が高い可能性あり
強い痛み、腫れ、発熱 激しい炎症や急性血栓を疑い医療介入が推奨
硬いしこりや膿の排出 痔瘻、膿瘍、腫瘍の疑い
セルフケアや市販薬でも改善しない 中等症以上や他疾患の可能性あり
排便時以外でも出血や違和が続く 排便に関係ない症状の持続は、早期に他疾患との鑑別が必要

※1

表に挙げた症状の中には、大腸がんを含む重大疾患との鑑別が必要なものもあります。

症状の程度に関わらず、医療機関で適切な診断と治療を受けることが早期改善につながります。

(※1 参考)日本大腸肛門病学会|肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン 2020年版

いぼ痔の治し方|肛門科・肛門外科での主な治療法

いぼ痔の治療法は幅広い選択肢があり、重症度や患者の希望に応じて治療方針が検討されます。

主な治療法は以下のものがあります。

  • 保存的療法:薬物療法、生活指導
  • 硬化療法:ジオン注射(ALTA療法)
  • 外科的治療:結紮切除術、ゴム輪結紮法
  • 併用療法:ジオン注射+結紮切除術

各治療法の特徴を順にわかりやすく解説します。

保存的療法:薬物療法、生活指導

いぼ痔の基本治療は保存的療法で、薬物療法と生活習慣改善を組み合わせて、症状の緩和と再発予防を目指します。

薬物療法では、痛みやかゆみを抑える軟膏や坐剤、必要に応じて内服薬が用いられます。

生活指導では、便秘や下痢にならないよう、食物繊維や水分摂取に加え、適度な運動で腸内の働きを整えます。

また、肛門部がうっ血を防ぐ、長時間の座位を避け、便意は我慢せず規則的な排便を促すことが大切です。

軽度〜中等度のいぼ痔であれば、通常は保存的療法で症状改善が期待できます。

硬化療法:ジオン注射(ALTA療法)

硬化療法の一種であるジオン注射(ALTA療法)は、脱出を伴う内痔核に対して行われる注射治療です。

硫酸アルミニウムとタンニン酸を有効成分とする硬化剤を患部に注入し、痔の脱出を改善します。

薬理作用で痔核への血流遮断により痔核が縮小し、周囲組織と癒着・固定されるため、脱出が起こりにくくなります。

注射のみで出血や脱出症状の改善を目指せるため、身体への負担が少ないことも利点とされます。

投与後は1週間〜1か月程度で痔の縮小が進み、次第に出血や腫れが落ち着いていくことがほとんどです。

外科的治療:結紮切除術、ゴム輪結紮法

保存的療法や硬化療法で改善が乏しい、あるいは痔の脱出が進行している場合には外科的治療が検討されます。

結紮切除術は根治性の高い術式で、痔核に血液を送る動脈を糸で縛り、血流を遮断した上で痔核を切除します。

ゴム輪結紮法は、痔核の根部を輪ゴムで締め付けて血流を遮断し、痔核を壊死させ自然脱落を促す方法です。

外科的治療の適応は単に症状の程度だけでなく、患者の希望や服薬状況などを踏まえて総合的に判断されます。

併用療法:ジオン注射+結紮切除術

痔の再発リスクを抑えるために、ジオン注射(ALTA療法)と結紮切除術を組み合わせる併用療法が用いられることがあります。

大きい内痔核や外痔核も併発している場合、ジオン注射単独では再発しやすいという課題があるためです(※1)。

例えば、大きな痔核や外痔核は手術で取り除き、小さい内痔核にはジオン注射で縮小させる組み合わせ方があります。

併用療法は再発リスクを抑えつつ、切除範囲を最小限にすることで、身体への負担や術後の痛みの軽減にもつながります。

(※1 参考)日本大腸肛門病学会|肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン 2020年版

いぼ痔はどれくらいで治る?重症度別の目安期間

いぼ痔の治癒期間は、症状の重症度や治療法、個人差によって異なるため、一概に断定することはできません。

以下に示す期間はあくまで目安であり、重症度別に代表的な治療法と症状改善までの参考例です。

  • 軽症:保存的療法で1〜2週間程度
  • 中等症:硬化療法(ジオン注射)で1ヶ月程度
  • 重症:外科的治療(結紮切除術)で1ヶ月程度

これらの目安期間よりも早く改善する方もいれば、回復に時間を要する方もいます。

特に手術を受けた場合は、いぼ痔の症状が改善しても、手術創部の完全な治癒には数ヶ月かかることがあります。

治療を受ける際は、回復も含めた治癒期間の目安を医師に確認しておくと、経過観察や日常生活への影響を把握しやすくなります。

よくある質問

いぼ痔の治癒についてよくある質問をまとめました。

いぼ痔はほっといてもいいですか?

軽度のいぼ痔であれば経過観察できる場合もありますが、症状が悪化する可能性があるため、放置は望ましくありません。

出血、脱出、痛みなどが長引く場合は医療機関の受診が推奨されます。

痔を放置するとどれくらいで治りますか?

痔は自然に完治することはほとんどなく、症状の改善には薬物療法や生活習慣の見直しなどが必要です。

放置は症状悪化のリスクがあり、重症化すると手術が検討される場合もあります。

痛くないぷにぷにしたいぼ痔でも治療が必要ですか?

いぼ痔に痛みを伴わない場合でも、症状の進行を防ぐために治療を検討するのが望ましいです。

軽度のいぼ痔は保存的な治療で改善できることが多いため、医師の診断のもと早めの対処が推奨されます。

「いぼ痔が自然に治った」というネット情報は本当ですか?

いぼ痔の症状が一時的に緩和することがありますが、完全に自然治癒するケースは稀です。

インターネット上の体験談は個人差が大きく、信頼に足る情報とはならないでしょう。

いぼ痔はボラギノールで治りますか?

ボラギノールなどの市販薬は、かゆみや痛みなどの症状を和らげる効果が期待できます。

症状が長引いたり悪化が見られる場合は、他疾患の可能性も含めて医療機関での診断を受けることが大切です。

まとめ

いぼ痔は自然治癒が難しく、軽度であっても排便習慣の見直しやセルフケアは最低限必要とされます。

市販薬で症状が改善しない場合は、他疾患の疑いも考慮して早めに肛門科・肛門外科の受診が推奨されます。

筑波胃腸病院では、いぼ痔をはじめとする肛門疾患に幅広く対応しております。

忙しい方でも安心の短期滞在外科手術(適応条件あり)や、プライバシーに配慮した診療体制を整えています。

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一般診療
8:45〜12:00 ×
15:00〜17:30(受付17:00まで) × ×

鈴木 隆二

監修 鈴木 隆二 筑波胃腸病院 理事長

経歴
  • 聖マリアンナ医科大学 卒業
  • 東京女子医大初期臨床研究センター 研修医
  • 東京女子医大消化器病 センター 外科 錬士
  • 東京女子医大大学病医学 研究科 博士課程修了
  • 東京女子医大消化器病 センター 外科 膵臓外科 助教
  • 医療法人筑三会筑波胃腸病院 理事長

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