痔は誰にでも起こりうる一般的な肛門疾患ですが、初めて発症する方は「何科を受診すべきか?」と迷う方は少なくありません。
「もしかしていぼ痔かも?」と感じていても、恥ずかしさや不安から病院へ行くのをためらい、症状を悪化させてしまうケースも多く見られます。
結論として、いぼ痔や切れ痔などの肛門トラブルは、肛門科・肛門外科の受診が推奨されています。
この記事では、いぼ痔の種類や受診すべき診療科、相談しやすい病院選びのポイントまで詳しく解説します。
いぼ痔には2種類ある|内痔核・外痔核の症状と違い
いぼ痔とは、医学的には痔核と呼ばれる疾患で、肛門周辺の静脈がうっ血して腫れた状態を指します。
主な原因は、便秘や排便時の強いいきみ、長時間の座位などにより肛門への持続的な負担や血流障害と考えられています。
いぼ痔は大きく分けて「内痔核」と「外痔核」の2種類に分類され、症状の程度や進行段階によっても治療方針が異なります。
- 内痔核:痛みは少なく出血しやすい
- 外痔核:腫れと強い痛みが出やすい
それぞれの主な症状や発症部位の違いなど、詳しく解説していきます。
内痔核:痛みは少なく出血しやすい
内痔核は、肛門の歯状線(直腸と肛門の境目)より内側の直腸粘膜部にできる痔核です。
内痔核ができる直腸粘膜には、痛みを感じる知覚神経がほとんど分布しておらず、痛みがないケースが多いです(※1)。
主な症状は排便時の鮮血と痔核の脱出です。脱出の程度により、肛門部に何かがぶら下がったような違和感が出ることもあります。
軽症や脱出を伴わない内痔核の多くは、排便習慣の見直しや市販の外用薬で改善が見込めます。
なお、慢性的な違和感や頻繁な脱出には、外科的治療が必要な場合もあるため、医療機関の受診が推奨されます。
(※1 参考)MSDマニュアル|肛門直腸疾患の評価
外痔核:腫れと強い痛みが出やすい
外痔核は、肛門の外側(皮膚部分)にできる痔核で、急激な腫れと強い痛みが特徴です。
発症すると肛門周囲の静脈内に血栓が形成され、血液のうっ滞や炎症が生じることで赤紫や黒色に近い血豆状の腫れが見られます。
治療の基本は安静と保存療法であり、外用薬や排便習慣の見直しにより多くの場合は徐々に症状の改善が見られます。
外痔核の悪化で、肛門周辺の静脈内に血栓ができることがあり、痛みが強い場合は血栓除去のために切開が必要になるケースもあります(※1)。
外痔核は突然の腫れと強い痛みを伴うため、日常生活に支障をきたしやすい疾患です。早期に医療機関で適切な治療を受けることで、速やかな改善が期待できます。
いぼ痔・切れ痔・痔瘻など肛門周辺のトラブルは肛門科(肛門外科)を受診
いぼ痔・切れ痔・痔瘻などの肛門周辺の疾患は、専門性の高い肛門科・肛門外科の受診が推奨されています。
肛門科・肛門外科は肛門疾患の診断と治療に精通しており、症状や重症度に応じて薬物療法から手術まで対応しています。
また、痔と似た症状を示す大腸がんをはじめとする重大疾患を見逃さず、正確に鑑別するためにも専門的な診察が重要です。
近隣に肛門科がない場合、消化器外科や一般外科でも初期診療が可能で、必要に応じて他病院への紹介が行われます(※1)。
肛門周辺の違和感に気づいたら、ためらわずに医療機関へ相談することが早期回復につながります。
(※1 参考)日本消化器外科学会|消化器外科医が扱う消化器の病気
いぼ痔で病院に行くべきタイミング
いぼ痔で病院を受診するタイミングは、症状の程度や持続期間が判断の目安になります。
以下の表に該当する症状があれば、速やかに肛門科・肛門外科で診察を受けることが推奨されます。
受診が推奨されるいぼ痔の症状 | 解説 |
---|---|
頻繁または大量の出血 | 持続的な出血は中等度以上の痔核や他疾患の可能性あり |
脱出が戻らない・何度も脱出する | 緊急性や進行度が高い可能性あり |
強い痛み、腫れ、発熱 | 激しい炎症や急性血栓を疑い医療介入が推奨 |
硬いしこりや膿の排出 | 痔瘻、膿瘍、腫瘍の疑い |
セルフケアや市販薬でも改善しない | 中等症以上や他疾患の可能性あり |
排便時以外でも出血や違和が続く | 早期に他疾患との鑑別が必要 |
※1
いぼ痔は軽症であれば自然に軽快することもあり、軽い痛みや一時的な出血のみの場合は、市販薬や排便習慣の見直しで経過観察が可能です。
ただし、基本的に自己判断で放置するのは望ましくありません。
「まだ我慢できる」「放っておけば治るかも」と様子を見ているうちに、症状が進行してしまうケースも少なくないからです。
悪化や他疾患を見逃さないためにも、早めに肛門科・肛門外科で相談することが早期回復につながります。
いぼ痔で病院に行くのが恥ずかしい方へ|病院選びのポイント
肛門の不調やいぼ痔の症状があっても、恥ずかしさから受診をためらう方は少なくありません。
近年は早期受診を促すため、肛門科特有の不安や恥ずかしさに配慮した体制を整える医療機関が増えています。
恥ずかしさや不安感が強い方でも受診しやすいとされる病院選びのポイントを3つ紹介します。
- 女性専用外来や女性医師がいる
- プライバシーの配慮を公言している
- ネット予約ができる
自分に合った通いやすい医療機関を見つける参考にしてください。
女性専用外来や女性医師がいる
いぼ痔の診療に抵抗を感じやすい女性は、女性専用外来や女性医師のいる肛門科・肛門外科の受診が安心です。
肛門疾患の診察は、男性医師への抵抗感から受診をためらう女性も少なくありません。
近年では「女性医師が診察」「女性専用外来あり」と明記する医療機関が増えており、初診時に希望を伝えると配慮してもらえることが一般的です。
リラックスして症状を話せる環境を選ぶことで、適切な治療につながりやすくなります。
プライバシーの配慮を公言している
プライバシーの配慮を明確に掲げる医療機関は、周囲を気にせず安心して相談できる環境が整えられています。
心理的負担を軽減し受診のハードルを下げるため、以下のような配慮が導入されているケースが多く見られます。
- 完全個室の診察室
- 名前を呼ばず番号で案内
- 症状を声に出さず伝えられる問診票
- 手術専用の待合スペース
事前に電話やホームページなどで配慮に関する取り組みを確認しておくと、不安が和らぎ、落ち着いて受診しやすくなるでしょう。
ネット予約ができる
ネット予約ができる肛門科・肛門外科を選ぶと、人目が気になる待合室での時間を大幅に短縮できます。
近年では、スマートフォンやパソコンから、24時間いつでも診察日時を選べるWEB予約システムを導入するクリニックが増えています。
また、ホームページで当日の診察状況が確認でき、混雑を避ける工夫がされている場合もあります。
症状がつらく長時間の待機が難しい方も、ネット予約対応の肛門科・肛門外科なら負担を軽減しやすいでしょう。
妊娠中のいぼ痔は何科?軽度ならまず産婦人科に相談を
妊娠中のいぼ痔は、まず受診中の産婦人科に相談し、必要に応じて肛門科との連携診療が推奨されます(※1)。
妊娠中はホルモン変化や子宮の圧迫など妊娠特有の要因が重なり、いぼ痔ができやすい時期です。
産婦人科では妊娠状況に応じて、安全に配慮した生活指導や薬物療法など初期治療が行われます。
症状が強い場合や産婦人科での対応が難しいと判断された際には、肛門科・肛門外科で専門的な治療が検討されます。
妊娠中の肛門トラブルも対応できる治療体制が整っているため、気になる症状があれば妊婦健診時に相談してみましょう。
なお、妊娠中は胎児への影響を考慮し、市販薬の自己判断使用は避け、必ず医療機関に相談のうえ適切に服用することが望ましいです(※2)。
よくある質問
いぼ痔についてよくある質問をまとめています。
いぼ痔の診察は消化器内科やかかりつけの内科でもいいですか?
初期診療や診断は消化器内科や一般内科でも対応可能です。
重症例や専門的な治療が必要と判断された場合は、肛門科・肛門外科が紹介されます。
子どもの痔は小児科ですか?肛門科ですか?
基本的には大人と同様に、肛門科が専門です。
乳幼児や小さな子どもの場合は、まず小児科での診察を受け、必要に応じて肛門科と連携することもあります。
生理中でもいぼ痔の治療を受けられますか?
生理中でも治療を受けられる医療機関がほとんどです。
受診時に生理中であることを伝えれば、必要な配慮をしてもらえますので安心して相談してください。
まとめ
いぼ痔は種類や症状が多様であり、病態によって必要な治療法も異なります。
「単なる肛門のトラブル」だと考えていても、他の疾患が隠れている可能性も否定できません。
肛門疾患の正確な診断には、肛門科・肛門外科での専門的な診察が推奨されています。
病状を見極め、適切な治療を受けるには、肛門科・肛門外科での専門的な診察が重要です。
近年では、肛門科診療に対する心理的ハードルを軽減するため、プライバシー保護や不安に配慮した医療環境の整備が進んでいます。
筑波胃腸病院では、いぼ痔をはじめとする肛門疾患の診察を行っています。
プライバシーへの配慮や土日診療など、どなたでも通院しやすい診療体制を整えています。
入院不要の短期滞在外科手術(適応条件あり)にも対応しており、忙しい方でも安心して治療を受けられる環境です。
茨城県つくば市周辺で肛門トラブルにお悩みの方は、当院へご相談ください。ご予約は待ち時間の少ない【ネット予約】がおすすめです。
一般診療 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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8:45〜12:00 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
15:00〜17:30(受付17:00まで) | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | ○ |
監修 鈴木 隆二 筑波胃腸病院 理事長
経歴
- 聖マリアンナ医科大学 卒業
- 東京女子医大初期臨床研究センター 研修医
- 東京女子医大消化器病 センター 外科 錬士
- 東京女子医大大学病医学 研究科 博士課程修了
- 東京女子医大消化器病 センター 外科 膵臓外科 助教
- 医療法人筑三会筑波胃腸病院 理事長